日本一の焼肉店 スタッフインタビュー

決して語られないスタミナ苑社長の親心。寡黙な背中に隠された「お客さんへの想い」と「従業員への気遣い」

幸田 連太郎 [写] / 宮澤 悠馬 [著]

謎に包まれたスタミナ苑社長に直撃取材。

-- いつもスタミナ苑でご飯を食べているとき社長さんの姿は見えませんが、営業中はどちらにいるのでしょうか?

ずっと奥の方で正肉をカットしているよ。表に出てワイワイするのがあんまり得意じゃないんでね。そういうのは全て弟やスタッフに任せている。でも別に、人と関わるのが嫌いなわけじゃないから。

静かに黙々と仕事をするのが性に合っているだけだよ。そうやって全神経を作業に注げば、その分美味しいお肉ができあがる。それならお客さんも喜んでくれるだろ?

お客さんあっての商売なんだから、お客さんには喜んでもらいたい。その一心で、とにかく黙って手を動かしているよ。

-- 本当にスタミナ苑さんのスタッフさんは「お客さん第一」ですよね。それはやっぱり社長さんの教えなのでしょうか?

いやぁ、別に念入りに教えたりとかはしていないよ。みんな自然にそうなっていっただけじゃないかな?

弟は「お客さんを恋人だと思え」なんて言っているけど、俺はさすがにそこまでは考えていないな(笑) 弟らしい良い考え方だと思うけどね。

俺はただ、おふくろから引き継いだこの店をみんなに愛してもらえればそれでいい。それだけを考えて働き続けてきたら、気づいたらもう57年も経っていたよ。

-- 57年!!かなりの年数ですね。毎日大変じゃないですか?

ん-、正直働きすぎて、もう大変なのかどうかもわからないな。でも、どこだって一緒でしょ?朝から晩まで一生懸命に働けば、誰だって疲れるよ。

大変なのは俺だけじゃないのに、社長である俺が文句を言っていたら、他の人に示しがつかない。だからやるしかないよな。

-- なるほど。社長であることに、強い責任感を持たれているのですね。

責任感っていうか、やっぱり気持ちよく働いてもらいたいじゃない。

だからみんなのために俺ができることは常にしているよ。特にお金はかなり意識しているね。やっぱりお金を貰えると嬉しいだろ?俺だってアルバイトをしていたときはお金が一番嬉しかったからね。

だからたまにアルバイトにはお小遣いをあげたりしているよ。

-- 素敵な考え方、まるで親御さんのようですね。

親か。まあそうかもね。みんなの生活を受け持っている以上、俺が支えてあげないとみんな困るだろうから。俺の自分勝手で、「明日から店を閉めます」なんてできないから。

あとは、お客さんも一緒だな。せっかくお店まで来てくれているわけだから、俺には彼らを楽しませる責任がある。

だから、店員もお客さんもこのスタミナ苑で楽しんでもらいたい。そういった考え方は、頭のどこかにはあるかもしれないな。

-- 素晴らしい思いやりですね。

当然だよ。あとは純粋に感謝の気持ちもあるよ。結局俺が生活できるのも、みんなのおかげだからね。

お客さんが来てくれて、俺たちのお肉を食べてくれるからウチにお金が入ってくる。そして社員やアルバイトが働いてくれるから、そのお客さんたちが満足して焼肉を楽しめているわけだろ?

俺一人で店を全て回すなんて絶対にできないから、感謝しているよ。

-- 素敵な関係性ですね。そんな仕事場では全員の親である社長さんは、仕事以外では普段どんなことをしているのですか?

特に何もしていないね。趣味と言えるようなものは無いな。休みの日はずっとボ-っとしていることが多いよ。

でも、学生の頃はよく外に遊びに行っていたよ。たまにスポ-ツ自転車で軽井沢なんかまで行ったりしたな。ここから出発したから相当な距離を移動してかなり疲れたけどね。でもそうやって外で汗をかいて、自然を感じるのが大好きだった。

今とは大違いだったよ(笑)

-- 自転車で軽井沢ですか!?でも、今でも毎日このスタミナ苑で長時間働いているわけですから、その体力はその頃の副産物というわけですね。

いや、どうだろうね。まあどちらにせよ、今はもう体力も無いからね。そんなことは絶対にできないな(笑)

毎日仕事をするだけで精一杯だよ。みんなとこのスタミナ苑で働くだけで俺は幸せだから。

-- 素敵なお言葉ですね。最後に、この記事を読んでいるみなさんに一言いただけますか?

まあ、俺に会うことはほとんどないだろうけど、みんなが食べる肉は俺が捌いているからさ。その肉を美味しいと思ってもらえれば、俺はそれで十分だよ。

とにかく楽しんでいってくれ。